こんにちわ^^
コーヒー焙煎研究所わたるの焙煎師のWATARUです。
本日は、焙煎師ならではのコーヒー焙煎について科学的な側面を考慮して行うアプローチ方法などを詳しく記述して備忘録代わりにもしてお伝えしていきたいと思います。
とても長く専門的な知識や用語が盛り沢山ですので、焙煎に興味のある方や焙煎に携わる方にオススメな記事になると思いますので、最後までお付き合い下さいね。
目次
「焙煎原理と現象」「焙煎手法と手段」「焙煎テクニックと実践」の3つの側面
まず、コーヒー焙煎とは・・みたいな所から整理していくべきなのかと思います。コーヒー生豆が熱を吸収して様々な反応を起こし続けていく過程で人間が感知出来る・・
①香り
②酸味
③甘味
④苦味
・・などの要素を焙煎によって仕上げていくプロセスのことであります。下記ブログ記事にも、コーヒー焙煎の焙煎度合いのことについて詳しく記述しておりますので、是非ご参照下さいね。
このコーヒー焙煎を考える際にややこしくなるのが、化学的な反応と味わいや香りの結びつくフェーズを理解しつつ、その断続的かつ継続的に起きている現象を把握して焙煎工程を進めていかなければならないことであります。
この複雑な焙煎プロセスのことを3つに分類をしてお伝えしていきたいと思います。
第1章:生豆自体の成分と熱による反応について
第2章:焙煎手法と手段について
第3章:焙煎テクニックや実践での流れについて
ちょっと、今回のブログは複雑でありながら長めになりつつ、前提となる難しい専門用語も噛み砕きながらお伝えしていきます。私の現在の備忘録も含めておりますので、専門用語や私の自分語みたいな表現もありますが、皆様にも少しでも分かりやすくお伝えさせて頂きます。コーヒー焙煎の3つ理解する側面を考慮した構成の記事にしていきますので、3つの章に分けて記述していきますね。熱く長い文章になりますが、最後までお付き合い宜しくお願いしますね。
第1章~コーヒー豆を焙煎する際の「原理と現象」の側面について~
まず、コーヒー焙煎を理解するためにはコーヒー生豆が焙煎をされる際に、どのような状態になっていくのかを知ることが必要になってきます。前途でも記述しておりますように、コーヒー焙煎とは豆に熱を与えて化学変化を促していきながら味や香りを引き出していくプロセスのことをいいます。
そのコーヒー生豆は、元々はコーヒーの木になる実の中にある種子であります。その種子は精製処理や選別を行うことによってコーヒー生豆として出荷されていきます。そのコーヒー生豆が私たちの手元に届き、焙煎機でコーヒー焙煎を行い熱を与えて味と香りを整えております。
では、まずそのコーヒー生豆にはどのような成分があり、熱を与えることによってどのような反応や変化があるのかをお伝えしていきますね。
~~コーヒー生豆に含まれる主要成分~~
①水分
②カフェイン
③クロロゲン酸類
④少糖類
⑤多糖類
⑥アミノ酸
⑦タンパク質
⑧酸
⑨脂質
⑩灰分
これら上記の項目がコーヒー生豆に含まれている主要成分であります。この生豆に含まれる主要成分は、焙煎工程により熱が与えられることにより「消失する」か「変化しない」か「分解されてまた別の成分として結合して生じる」3つのパターンがあります。
この3つのパターンを繰り返し行うことによって、コーヒーの「苦味」「酸味」「甘味」「香り」を感じるようになる焙煎豆になります。では、上記の成分について補足も含めてご説明していきますね。
下記ブログリンク記事にも、詳しくコーヒー生豆のことについて記述しておりますので、ご興味のある方はこちらもご参照下さいね。
①水分について
生豆には10%~13%程度の水分が含まれていることが多くあります。その水分含量が少ないと豆が欠けたり脆くなりやすい傾向にあります。逆に、水分含量が14%以上あるとカビの増殖やカビ臭の問題が発生しやすくなります。
そして、焙煎時にこの水分はとても重要になります。水分は豆の全体に伝熱をするために必要になってきます。例えば、生豆の水分量が多いと温度吸収率も高くなり、全体に熱を伝わる速度が速くなります。逆に、水分量が少ないと温度吸収率も低くなり、全体に熱が伝わっていく速度が遅くなります。
この生豆の水分量に関しては、コーヒー焙煎を行う際には伝熱するための手段では重要なポイントになります。そして、この水分は焙煎をすることにより「消失する」のであります。
②カフェインについて
コーヒーの代表的な成分とも知られているカフェインは、さまざまな薬理作用を持ちつつ、コーヒーの苦味の約10%程度を形成しております。また、クロロゲン酸と複合体を形成することによりコーヒーの濁りの原因にもなっております。
ちなみに、カフェイン成分は焙煎しても「あまり変化しない」で消失するのは微量であります。
③クロロゲン酸類について
クロロゲン酸類とは、「コーヒー酸」と「キナ酸」が結合したものの総称であります。コーヒーには、少なくても10数種類のクロロゲン酸類が含まれております。その主要成分であるクロロゲン酸は弱い酸味と苦味を持っております。他にも、ジククロゲン酸と呼ばれる物質もあり、メタリックな味や不快な渋味の原因になると言われております。そのジククロゲン酸は未成熟豆に多く含まれているため、その含量がコーヒーチェリーの熟度判定にも用いられております。
クロロゲン酸類は焙煎時に生じる「酸」や「褐色色素や」や「香気成分の素」(前駆体)になります。コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸の量は、果物や野菜などに比べて多いとも言われております。
ちなみに、クロロゲン酸類は焙煎することによって「分解されてまた別の成分として結合して生じる」ような成分であります。
④少糖類について
ショ糖(砂糖)に代表される少糖類は焙煎時に生じる「酸」や「褐色色素」や「香気成分」の前駆体となる成分であります。この少糖類は、コーヒーチェリーの熟度に応じて増加していく成分でもあります。
ちなみに、少糖類は焙煎することによって「ほぼ消失」していきますが、後に別の成分として結合していく特徴もあります。
⑤多糖類について
多糖類は生豆の主要成分であります。水に溶けない多糖類は豆の硬さなどに影響を与えております。また、水に溶ける多糖類は抽出液に含まれる固形分の主要な成分ともなっており、コーヒーの口当たりや質感などに影響を与えております。
ちなみに、コーヒーパーチメントの周りに付着しているミューシレージもペクチン(ジャムの凝固剤)という多糖類を主成分にしております。
そして、多糖類は焙煎することによって成分量は「あまり変化しない」ものであります。
⑥アミノ酸について
生豆の中に含まれる量は多くはないが、「褐色色素」や「香気成分」の前駆体として、焙煎中にアミノ酸が持つ役割は重要になります。そのアミノ酸と総称する物質には「アスパラギン酸」「グルタミン酸」「ヒスチジン」「アラニン」「セリン」などが比較的に多く含まれております。
アミノ酸は焙煎することによって「ほぼ消失」していきますが、前途で申しているように「褐色色素」や「香気成分」の前駆体として他の成分などと結合していきます。
⑦タンパク質について
コーヒー生豆の成分の中では多糖類に次いで多く含まれているのがタンパク質になります。そのタンパク質の半分くらいは水溶性のアルブミンが占めております。焙煎中には、一部分解して「香気成分」「褐色色素」「苦味成分」の前駆体としての役割をしております。
ちなみに、タンパク質は焙煎することによって成分量が「あまり変化しない」ものであります。
⑧酸について
コーヒー生豆にはクロロゲン酸以外にも、「クエン酸」「リンゴ酸」「キナ酸」「リン酸」などが含まれております。その含量は最大でも2%程度であります。この生豆に含まれる酸の量がコーヒーの酸味に反映している訳ではなく、焙煎時に生じる酸の量の方が大きく酸味には影響をしております。
⑨脂質について
コーヒー生豆に含まれる脂質の75%~80%は油脂であり、その他には「ジテルペン」や生豆の表面に多く存在する「ワックス」が含まれております。油脂の組成は一般的な植物性の油脂と同様で「リノール酸」「パルミチン酸」「ステアリン酸」「オレイン酸」が主成分になります。
この脂質は焙煎時による変化は少なく、液体でも抽出されにくく溶けにくいといわれている成分でもあります。さらに、ペーパーフィルターなどではろ過されにくいために、コーヒー1杯分に含まれる量は微量であります。
ちなみに、脂質の成分量は焙煎時にでも「あまり変化しない」ものであります。
⑩灰分について
生豆の成分での灰分は、「品種」や「土質」や「水質」や「精製方法」などで含量が変化するといわれております。そして、30種類以上のミネラルが含まれていて、「カリウム」(40%くらい)「カルシウム」「マグネシウム」が主であり、あとの成分は極微量であります。
ちなみに、焙煎中に成分量は「あまり変化しない」ものであります。
~~焙煎中に伝熱よる生豆に含まれる成分の変化について~~
前途で説明したような成分が生豆中に含まれている主要成分になります。これらの成分が、焙煎時に熱による「分解」「消失」「結合」「生成」などを繰り返して、酸味・苦味・甘味・香りなどの特徴を持ったコーヒー豆に変化していきます。
その生豆に含まれる成分も熱を与えることによって【あまり変化しないもの】【大きく減少するもの】【増加するもの】などがあります。それらの仕組みや変化を下記にまとめてみました。
◎焙煎時の酸味が形成されていくプロセスについて◎
コーヒー生豆の酸味成分量は焙煎過程により、総酸量はある段階から増加して、少しづつ減少していく傾向があります。その酸味成分の内訳は、焙煎初期段階ではクロロゲン酸の熱分解で生成される「キナ酸」や「コーヒー酸」などが増加していきます。そして、少糖類の熱分解で「酢酸」「ギ酸」「乳酸」「グリコール酸」が生成されていき、これらが焙煎初期での酸味成分となります。
そのあと、焙煎後期での酸味成分が減少していく理由は、これらの酸の成分が熱による分解作用が働くことが原因であります。ただし、これらの変化は時間と温度に依存しますので、熱の与え方などによって酸の質や強さは変化していきます。
◎焙煎時の苦味が形成されていくプロセスについて◎
コーヒーの苦味成分は焙煎プロセスでの熱反応によって生まれてきます。代表的な成分は「カフェイン」やアミノ酸が重合した「ジケトピペラジン」や「褐色色素」などが苦味に大きく影響しているといわれております。
そして、この苦味に影響を与えている「褐色色素」の成分についてですが、コーヒーの色合いが濃く黒くなればなるだけ重厚な苦味になるといわれております。この褐色色素は「アミノ酸」「ショ糖」「クロロゲン酸」などが熱分解から結合や化学反応などを起こして「褐色色素C」「褐色色素B」「褐色色素A」に形成されていき苦味の要因になっていきます。
◎焙煎時の香りが形成されていくプロセスについて◎
コーヒー生豆の香気成分は、焙煎によって形成される成分の数は650種類くらいあると知られております。ただ、その含量は多いものでも1%にも満たずに量的にも微量でありますが、コーヒーに含まれる香気成分は主成分でああることが認められております。
そして、これらの香気成分の多くは「少糖」「アミノ酸」「クロロゲン酸」から生成されております。その中の成分で単独でコーヒー香りを発するものはなく、主要なものだけでも40種類程度といわれております。また、産地や品種などには特有の成分はなく、各成分の微妙なバランスの違いだけで、産地や品種の香りの違いなどが生まれているといわれております。
~~コーヒー生豆の焙煎時に変化する見た目と成分について~~
コーヒー生豆は、焙煎によって熱が伝導していくことにより繊維に熱が伝わり水分が熱移動や蒸発を繰り返して、コーヒー豆の成分によって熱反応が起こり分解や結合や消失や生成などを繰り返して「酸味」「苦味」「甘味」「香り」を持つものになっていきます。
ここでは、コーヒー生豆の表面の色合いや香りと成分変化のプロセスをお伝えしていきたいと思います。ここでは、温度と時間を私の使用しているフジローヤルR105での環境で照らし合わせた際の経時をお伝えしていきたいと思います。
~~焙煎条件~~
焙煎機: 半熱風式ドラム
生豆: 中南米ウォッシュドプロセス/トップスペシャルティコーヒー(スコア85点以上)
焙煎度合い: 2ハゼまで
焙煎時間: 11分くらい
伝熱: 180度くらいのドラム内温度で投入⇒ニュートラルダンパーで一定火力で12分間の対流熱での焙煎ペース。
◎コーヒー豆が青白い見た目の状態のとき◎
まだ焙煎機のドラム内の温度が高くコーヒー豆に熱を吸収している状態です。水分が豆全体に熱移動をしており、少しづつ色合いが「青白い」⇒「白い」見た目に変化していきます。
このときには、水分が蒸発したり豆繊維が縮んで収縮したりとしている状態です。コーヒー豆はしっかりと熱吸収をしております。
豆温度=100℃前後くらい
香り=生豆っぽい香り
色合い=青白い
◎コーヒー豆が白っぽい見た目の状態のとき◎
豆の表面の色合いが「青白い」⇒「白っぽい」状態に変化してきます。このときは、対流熱を受けて少しづつ水分が蒸発しつつ、水分を介して豆の全体の繊維に熱が移動していることにより化学反応を起こしつつあります。
この状態の時は少しづつ「ショ糖」と「アミノ酸」が加熱によりメイラード反応を起こし始めていきます。ただ、まだ目視して色合いや香りの変化は分かりづらい状況です。香りに関しては、まだまだ生豆っぽい香りで蒸気を感じます。
豆温度=130℃~140℃くらい
香り=水蒸気っぽい湿気の中に生豆の香り
色合い=白っぽい
◎コーヒー豆が黄色っぽい見た目の状態のとき◎
この色合いを焙煎をする際に1つの目安にする焙煎師の方は多くいらっしゃいます。いわゆる「イエローポイント」などと呼んでおります。もう少し熱反応が進めて「ゴールド」といわれるポイントを指針にされる方も多くいらっしゃいます。
何故、この状態ときを目安にする方が多いかといいますと、見た目と香りを感知しやすく目安にしやすいからです。外観は、前途で申したとおりイエロー(黄色)であり、香りに関してはこの色合いの辺りから甘い香りを感じやすくなってくるのであります。その見た目と香りを焙煎の中継地点としての1つの目安にしやすいこともあるので、修正ポイントとしても活用しやすいといわれております。
現在みたいに、コーヒー化学の解明が明らかではない、一昔前での焙煎では温度と外観や音などを聞いて目安にしておりました。ただ、そのような人間の勘に頼る焙煎プロセスでは、豆の状態を詳しく認知している訳ではないので、毎回ポイントがズレたり、豆や焙煎環境が変わると対応が出来ないで居る方が多くいらっしゃったと思います。
この黄色っぽい状態になったときは、前途で申したようなメイラード反応が活発になり始めて、水分量も減少スピードが上がり、味や香りを生成していく段階に入りつつあります。
豆温度=150℃~160℃くらい
香り=甘い香り
色合い=黄色っぽい
◎コーヒー豆が茶色っぽい見た目の状態のとき◎
コーヒー豆の成分が分解されたり結合されたり生成されたりして「酸味」「香り」「甘味」などが表れ始めております。見た目は色合いが黄色から茶色に褐色しつつあり、コーヒーらしさを感じてくる瞬間でもあります。
「酸味」を形成する成分のクロロゲン酸などの熱分解が活発になります。そして「色合い」が変化するための「クロロゲン酸」「ショ糖」「アミノ酸」が褐色色素となるために、重合していきつつ褐色が増してきます。この褐色色素が深まるプロセスは「苦味」にも繋がっていきます。
「甘味」もこの段階くらいから活発に生成されていきます。それは、熱によりショ糖から生成される反応のキャラメライゼーションが起きカラメル化が始まります。このカラメル化が甘味に繋がるものとなっていきます。ただ、このカラメル化は同時に苦味も生成していく状態になります。
「香り」に関しても、少しづつこの状態の辺りから熱反応により発達が始まります。水分量もクラック(ハゼ)が開始すると消失スピードは加速していきます。
豆温度=170℃~180℃くらい
香り=香ばしい香りや華やかな香気成分など
色合い=茶色っぽい
◎コーヒー豆がハゼて焦げ茶色っぽい見た目の状態のとき◎
この1ハゼ段階が一番コーヒーらしさを感じるために、様々な成分が分解・生成・結合などを繰り返しております。これは「香り」「酸味」「甘味」「苦味」といった、コーヒーに不可欠な要素を生み出している状態であります。
1ハゼ辺りから業界用語でいえば「デベロップメントタイム」と呼ばれる時間帯になります。このデベロップメントを焙煎トータル時間の中で、どのくらいの割り合いを掛けていくかで香りと味わいのバランスは変わってきます。
昔ながらの、コモディティコーヒーといわれる先物市場での取引のコーヒークオリティであればあまり関与しない内容ではありましたが、現代のスペシャルティコーヒーのような香りと味わいが抜群のクオリティのコーヒーであれば、避けては通れない話しになります。このデベロップメントタイムを整えるために、焙煎工程を調整しているといっても過言ではないと思います。
ライトローストや浅煎りコーヒーといわれるものは、この辺りで煎り止めをしております。酸味を中心とした立体構造のバランスのコーヒーの液体の味わいと香りが成り立つことになります。
豆温度=180℃~190℃くらい
香り=コーヒー豆によって様々な香気がある
色合い=焦げ茶色っぽい
◎コーヒー豆の2回目のハゼが始まり黒っぽい状態のとき◎
コーヒー豆は二酸化炭素を溜め込んで、水蒸気と共に豆のセンターカットに沿って圧力が掛かって外部に放出していく際に、パチパチと破裂音がします。その際には、多量の水蒸気が放出されていきますので、水分量も一気に減少していきます。
このような爆ぜる現象が、コーヒー豆の焙煎中には2回に分けて起きます。前途の浅煎りのような焙煎度合いであれば1回目のハゼで終わるのですが、中深煎りのような苦味を中心とした味と香りのバランスのコーヒーに仕上げる際は、2ハゼは避けては通れない現象になります。
この2ハゼ前後まで焙煎度合いが進んでいると、「クロロゲン酸」と「ショ糖」から形成される『褐色色素C』。
「クロロゲン酸」+「ショ糖」=『褐色色素C』
「アミノ酸」と「ショ糖」で熱反応を起こしてメイラード反応により生成された『メラノイジン』。「ショ糖」が熱反応によりキャラメライゼーションにより生成される『カラメル』。
『メラノイジン』+『カラメル』=『褐色色素B』
「タンパク質」や「多糖類」とも結合して褐色色素Aが形成されていきます。つまり、すべての褐色色素Cと褐色色素Bと褐色色素Aが重合して、すべて褐色色素Aが生成されていきます。この褐色色素Aの割り合いが最終的には多くなり「酸味」「香り」「甘味」が分解されて減少していき、「苦味」成分が多くを占めるようになってきます。
『褐色色素C』⇒『褐色色素B』⇒『褐色色素A』(焙煎度合いが深いと割り合いが多い)
豆温度=200℃以上
香り=ロースト香が占めてくる
色合い=油分による光沢のある黒光り
第2章~コーヒー豆を焙煎する際の「手段と手法」について~
前途の章では、コーヒー豆が熱による反応に対しての原理と過程について詳しくお伝えさせて頂きました。この章では、その熱による成分変化をどのような手段と手法でコーヒー豆の焙煎を進めていくかについてお伝えしていきたいと思います。
まずコーヒー豆を焙煎をする際には、「手動焙煎機」と「電動焙煎機」のどちらかを選択します。ここでは、割愛させて頂き電動焙煎機でのコーヒー焙煎についてお伝えさせて頂きたいと思います。
その電動焙煎機も様々な熱源がありますが、ここでは割愛させて頂きガスを使用する焙煎についてお伝えさせて頂きます。このように焙煎機にしても様々な条件や性能がありますので、今回は私が使用しているフジローヤルR-105の半熱風式ドラムの焙煎機でのコーヒー焙煎についてお話しをさせて頂きますね。
~~今回の焙煎機の性能~~
ドラム構造: 半熱風式ドラム
熱源: プロパンガス
~~
この焙煎機の性能次第で焙煎の味や香り作りのプロセスが異なります。味わいや香りの幅も大きく変わってきます。その焙煎機の性能を理解した上で、その性能を最大限に活かした焙煎プロセスをすることが基本的に大事であります。
ここの章では、
1、半熱風式ドラム焙煎機の構造でのエネルギーの伝わり方
2、コーヒー豆の密度や水分量などによるアプローチ手段
3、生豆の特徴によってのゴールの考え方による焙煎計画方法
・・・などの『焙煎の手段と手法』について詳しくお伝えさせて頂きます。
半熱風式ドラム焙煎機の構造でのエネルギーの伝わり方について
まずは、私が普段使用している半熱風式ドラムでの焙煎機での熱の伝わり方についてのことをお伝えしますね。基本的に、コーヒー豆の温度は豆への熱の伝わり方によって決まってきます。物体間あるいは物体内に温度差があるときには、必ず熱の移動が起こります。このことを『伝熱』といいます。この『伝熱』には「伝導熱」「対流熱」「輻射熱」があります。
「伝導熱」とは・・豆の内部のような固体内、あるいは静止している液体・気体内で起こる伝熱のことであります。この伝導熱での熱の移動速度は温度差が大きいほど大きくなってきます。そして、熱を伝えやすい物質になればなるだけ大きくなります。
「対流熱」とは・・豆の表面と焙煎機内の空気との間で起こることであります。また、対流熱の伝熱速度も温度差が大きいほど大きくなってきます。対流熱では、熱風量の増加に伴い焙煎時間が短くなるのは対流による伝熱速度が大きくなることが理由といわれております。
「輻射熱」とは・・空間を介して隔てられている2つの固体表面間で起こり、遠赤プレートや炭から豆への赤外線・遠赤外線による伝熱のことであります。上記2つ(伝導、対流)の伝熱が温度差に比例して起こるのに対して、輻射熱は温度の4乗の差に比例して起こるため、温度差の影響をより大きく受けやすくなります。
この上記3つが焙煎機でコーヒー焙煎をする際に関わってくる伝熱になります。この3つの伝熱は、焙煎機の性能や機能次第で関わるバランスなどが変わってきます。ちなみに、私が使用している半熱風式ドラムの伝熱は「伝導熱」と「対流熱」になります。ここからは、この「伝導熱」と「対流熱」の2つの伝熱のバランスをどのようにコーヒー豆に伝えていくかを詳しく説明していきますね。
コーヒー豆の密度や水分値の関係性によるアプローチ手段
まず、コーヒー豆がどのような状態のコーヒー豆かで伝熱アプローチ方法が変わってきます。そのコーヒー豆の状態も大きく分類すると4パターンに分かれていきます。
◎1パターン目◎
【水分値が多い+密度が高い】
このパターンは、ニュークロップであり標高が高く寒暖差があり、ゆっくりと成熟した完熟豆に比較的に多くあるといわれております。水分値が多いと熱吸収率が高いので豆の固体内の伝熱速度が速いです。そして、密度が高いということは豆の中心までの熱伝導が速く伝わりやすく熱が入りにくいのであります。
*焙煎する際の注意点*
●予想以上にターニングポイントが低くなりがちです。
●焙煎後半には予想以上に温度上昇率が高くなり過ぎることがあります。
●水抜きに時間が掛かり過ぎてメイラード反応が遅れてしまい、トータル焙煎時間が長くなりがちです。
◎2パターン目◎
【水分値が多い+密度が低い】
このパターンは、ニュークロップでありますが標高が低く栽培され、多孔質で柔らかいコーヒー豆といわれております。前途と同じく水分値が多いため熱吸収率が高いので豆の中心までの伝熱速度が速いです。そして、密度が低いので豆の中心までの伝熱速度は遅くなり熱は入りやすいのであります。
*焙煎する際の注意点*
●予想以上に焙煎進行が早くなり過ぎて、ダークローストになってしまいがちです。
●対流熱のバランスを考慮しなければ、デベロップがアンダーになりがちになります。
●排気ダンパーがある焙煎機であれば、操作ポイントが重要になります。
◎3パターン目◎
【水分値が少ない+密度が高い】
このパターンは、豆の鮮度か保管状況が悪いため水分値が少なく、ゆっくりと成熟する環境で栽培されている豆といわれております。水分値は少ないので豆全体に対しての熱伝導は効率が悪くなります。しかし、密度が高いので熱は入りにくいのですが中心までの熱伝導は良いのであります。
*焙煎する際の注意点*
●フレーバーの未発達になる条件になりやすいので気をつけること。
●火力と風量のバランスを考慮して焙煎を進めなければ、フラットな印象になりがちです。
●表面だけ焙煎が進み、内部まで熱が伝導していなくて質感の悪いコーヒーになりがちです。
◎4パターン目◎
【水分値が少ない+密度が低い】
このパターンは、豆の鮮度か保管状況が悪いため水分値が少ないうえに、多孔質で柔らかい豆でもあります。まず、水分値が少ないので豆全体に対しての熱伝導は悪くなります。そして、密度も低いので豆の中心までの伝熱速度は遅く熱は入りやすいのであります。
*焙煎する際の注意点*
●予想以上にターニングポイントが早くなり、焙煎時間が短くなりがちです。
●いつも以上に火力に注意していかないと、焙煎進行が早くなりがちです。
●爆ぜるタイミングが予想以上に早くなりがちになります。
このように上記パターンを4つに分類してから、コーヒー焙煎をする際に熱伝導の側面から考慮してアプローチ方法を導き出していくことが必要になります。焙煎計画をする際には、ある程度はそのコーヒー豆の性質によって熱伝導効率のことを考慮しておくことが火力や風量などのバランスを決定するための要素にもなります。
生豆の特徴によってのゴールの考え方による焙煎計画方法
ここの章での最後に、生豆の特徴によってのゴールの考え方による焙煎計画方法についてお伝えさせて頂きたいと思います。前途でお伝えしたのはコーヒー豆の密度や水分値など、熱伝導に関わる要素であり、いわば『性格』というところなのでしょうね。
これからお伝えするのは、生豆の持つポテンシャルや特徴なので『体質』みたいな感じなのでしょうね。このコーヒー豆の体質を理解することは、味や香りのバランスのゴール設定をやりやすくしてくれることなのでしょう。
では、まずはこのコーヒー豆の体質といわれている特徴をコーヒー焙煎に必要なポイントを分けてみました。
~~焙煎計画で必要なコーヒー豆の特徴~~
1、産地・品種
2、精製処理方法
3、風味特性
~~~
これら3つの要素は、焙煎計画をする前にそのコーヒー豆の味や香りの要素をある程度の予測幅を決定つけてくれております。ただ、私の場合はこの本焙煎の前にサンプルロースターでのサンプルローストをして、カッピング評価を行ってから行いますので、前提となる基準が違いますのでご了承下さいね。
ちなみに、サンプルローストですがSCAAのカッピングプロトコルに従いローストにも一定基準を設けて行っております。このサンプルローストで生豆の品質のスコアを測り味わいや香りなどの幅を知ることが出来ます。下記のリンクには、そのSCAAでのスコアの基準や方法などを記載しております。そして、その下の動画ではSCAA方式の生豆のカッピングスコアを測る際の基準となる焙煎プロトコルに沿った焙煎動画ですので、是非ご参考にしてみて下さいね。
このように、上記3つの要素にカッピングでの情報を得たうえで、どのようなコーヒー豆に仕上げたいかを私はいつも考えます。そのときは、3つのことを念頭に置いて味わいと香りのバランスの創造して焙煎計画を行います。
~~コーヒー豆を焙煎する前の創造する3つのポイント~~
①そのコーヒー豆の風味特性となる個性を2つ以上に活かすことが出来ているか?
②「未発達」や「焦げ味」や「フラット」な印象を感じさせないか?
③自由であり縛られない創造性のあるコーヒーであるか?
~~~
コーヒーは酸味である!!・・とか、コーヒーは苦味である!!・・とか、生産者の想いをコーヒーの味わいにする!!・・とか、固定概念に縛られないことは、コーヒー豆を加熱調理するに当たって一番重要な要素ではないかな??・・と感じてコーヒー豆と向き合っております。そうすると、原理に基づきコーヒー焙煎を行っていくと様々なパターンのコーヒーが出来上がり、楽しみと感動が無数に生まれてきます。
このことを念頭に置いて、コーヒーの味と香りを想像して原理に基づくコーヒープロファイルを導き出して焙煎計画を事前にして焙煎工程を行っております。こんな言葉だけでは分かり難いと思いますので、幾つかの焙煎計画パターンをお伝えしておきますね。
~~~焙煎計画の例 パターン1~~~
生豆プロファイル: エチオピア GUJIエリア ナチュラル
スコア: 85点以上
潜在フレーバー: ピーチ、アプリコット、ストロベリー
焙煎度合い: 浅煎り
味と香りの方向性: 浅煎りで甘さを強調した立体的な熟度の高いフルーツを思わせるようなフレーバー
投入温度: 130℃くらい
ターニングポイント: 1分以内
イエローポイント: 3分~4分(見た目だけで中の香りは少しズラす)
1ハゼ: 7分~8分
DTR: 12%くらい
~~~
ちょっと専門用語と私用語が多くて分かり難いと思いますが、このレシピを私自身の半熱風式ドラム焙煎機に「投入量」と「火力と風力の対流熱」などを落とし込んで焙煎計画書にある程度書いておきます。そして、実際に焙煎していく際に環境温度や湿度などで生じる誤差をフラッグ毎のポイントで修正していきます。
まだまだ、分かり難いと思いますので、同じコーヒー豆の設定で2例目をお伝えしますね。
~~~焙煎計画の例 パターン2~~~
生豆プロファイル: エチオピア GUJIエリア ナチュラル
生豆スコア: 85点以上
潜在フレーバー: ピーチ、アプリコット、ストロベリー
焙煎度合い: 中煎り
味と香りの方向性: 中煎りで甘さと香りをバランスよく仕上げつつ、酸味も程よく熟度の高いフルーツ感を思わせるフレーバーとアフターテイスト
投入温度: 190℃くらい
ターニングポイント: 1分30秒以内
イエローポイント: 4分~5分(見た目だけで中の香りは結構ズラす)
1ハゼ: 8分~9分
DTR: 15%くらい
~~~
またまた文字と数字と専門用語の羅列で分かり難いですよね(笑)。このレシピをまた焙煎計画表に「火力と風力」と「投入量」を設定して落とし込んでいきます。ただ、コーヒー焙煎では前途で申したとおり、環境温度や湿度などで焙煎予想計画からズレたりします。その都度、ポイントになる部分で修正をしていきます。
今回の、焙煎度合いは中煎りでしたのでトータル焙煎時間や各フェーズとなるポイントは少しづつのズレがあったり、レシオが変化したりとしております。これらは、すべて最初の「味と香りの方向性」を決定した時点である程度のパターンは決まってきます。
ただ、まだこんな説明では分かり難いですよね(笑)私が、ここで何を伝えたいかと申しますと、コーヒー焙煎は「ゴールの設定」⇒「中継ポイントの設定」⇒「原理に基づいた計算と仮定」⇒「焙煎実践によるズレを修正」となるような感じです。
まだ分かり難いですね(笑)最後に、もう一つを同じ豆の想定で焙煎度合いを中深煎りでの焙煎計画でお伝えしますね。
~~~焙煎計画の例 パターン3~~~
生豆プロファイル: エチオピア GUJIエリア ナチュラル
生豆スコア: 85点以上
潜在フレーバー: ピーチ、アプリコット、ストロベリー
焙煎度合い: 中深煎り
味と香りの方向性: 中深煎りで苦味を中心とした立体的な構造を描きます。熟度の高いフルーツ感はそのままでありながら、苦味とボディをどっしりと感じつつアフターテイストはフルーティーさの余韻が残り続ける
投入温度: 140℃くらい
ターニングポイント: 1分以内
イエローポイント: 2分~3分(見た目だけで中の香りは大幅にズラす)
1ハゼ: 6分~7分
DTR: 20%くらい
~~~
もう何のこっちゃ分からない人も多いかと思いますが、この中深煎り焙煎では大きなポイントがあります。それは、豆の中心と表面の温度差や焙煎度のグラデーションを大きくすることです。つまり、中身は中煎りで表面は中深煎りの焙煎度合いに仕上げることです。お肉料理みたいに「外サクッ」の「中じゅわ~」みたいなことです。
豆の表面は酸味を分解しつつ褐色させて苦味を出しつつ、中は酸味と香りを残しつつ仕上げることによって、立体的な苦味を中心とした味と香りのバランスのあるコーヒーになります。ここでは、何が伝えたかったといいますと実際にフラッグがあり中継地点がコーヒー焙煎にはあり、その現象の1つ1つには化学反応を起こし目安となるポイントが「外観」や「香り」や「爆ぜる現象」などに表れてきます。
この第2章では、コーヒー豆の原理に基づいて「手法」や「手段」を用いるための基本や応用に注目してお伝えしてきました。この次の第3章では、1章と2章を総まとめにしつつ実践に伴うテクニックや私がフラッグにしているポイントを交えながらお伝えしていきますね。
第3章~焙煎テクニックと実践の流れでのポイントについて~
ここまで独断と偏見も交えながら、コーヒー焙煎の原理をお伝えしてきましたが、この第3章は総まとめになりますので、長くはなりますが最後まで是非ご観覧下さいね。ここでは、私が現在使用しているフジローヤルR-105の半熱風式ドラム焙煎機での実践の流れやポイントなどをお伝えしていきます。
コーヒー焙煎をする際の目安や中継地点の各フェーズについて
私がコーヒー焙煎をする際に、どの環境やどの焙煎機で焙煎をしても共通するコーヒー豆の反応による中継地点となる各フェーズのことについてお伝えしていきますね。コーヒー焙煎をしていく際に、この各フェーズのズレや予想値の修正などをコーヒー豆の反応によって変更していきます。その各フェーズを1つづつ紐解いていきますね。
◎投入量・投入温度◎
まず、最初の考慮するべきポイントは「投入量と投入温度」であります。この2つの条件は間違ってしまうと修正がやり難いので注意しなければなりません。まず、投入量ですがドラムの容量などを考えて計画しなければなりません。投入量を考慮するさいに注意するポイントをまとめてみました。
~投入量を決定する際に注意するポイントとは~
1、焙煎機のドラム容量のどのくらいの空間を使用するか
2、理想の焙煎プロファイルに対して無理のない量であるか
3、焙煎ムラが起きずに均一な熱が伝わる量なのか
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この3つのポイントを考慮して投入量を決定しなければなりません。コーヒー豆のクオリティ次第で限界投入量というのも決まってきます。例えば、フレーバーの複雑性がありデベロップをさせていく必要性のあるコーヒー豆であれば、短時間で熱を与えて温度上昇をさせていかなければなりませんが、その際に焙煎ムラがあったり温度上昇にムリがあったりするのであれば、投入量を考えなければなりません。
私の使用している半熱風式ドラム焙煎機であれば、排気ダンパーの開閉具合で対流出来る風の量が決定するので限界値が海外製品と比べると低くなります。そういう場合は、投入量を減らしたりして調整するしかありません。浅煎りで早い段階でイエローポイントやデベロップタイムを中継したい場合は、対流熱量が不足しがちになります。
そういうことがあるので、適した焙煎プロファイルとは焙煎機によって幅が異なってきます。一昔前のような、コモディティコーヒー市場では現在みたいに短時間での焙煎によって一気に熱量を与えて香りや味わいを引き出すことはありませんでした。なので、あまり対流熱量を必要としなかったのですが、現在の高品質のコーヒーには一気に加熱していくプロセスは避けては通れません。
このようなことも踏まえて、投入量は例えば私が使用している半熱風式ドラム焙煎機の5kg容量であれば、ギリギリの5kgの豆を投入するのではなく、ムラなくムリなく熱量が与えていける投入量を設定しなければなりません。ここではゴールが設定していなければ正解はありませんが、スペシャルティコーヒーのようなスコアが高い豆であれば、5kgの60%(3kg)くらいまでが限界であると思います。ただ、特別に浅煎りで酸味を中心としたフレーバーの構成であれば難しくなってきます。このように、煎り具合や香り重視であるか味わい重視であるかでも適正投入量も変わってきます。
そして、投入温度に関してはゴールを設定した上で対流熱でアプローチが良いのか伝導熱でのアプローチが良いのかで決まってきます。それは、コーヒー豆に対して最初のアプローチだけは選択が出来るということであります。半熱風式ドラム焙煎機の場合は、最終的にはほとんど対流熱での焙煎工程にはなりますが、初期段階だけはドラムの蓄熱を利用していくか、始めから対流熱を重視に伝熱をしていくかになります。
このアプローチを決定するのは、イエローポイントの状態やタイミングをジワジワと熱を伝えていきたいかと、スピーディーに伝熱していきたいかで変わります。このイエローポイントもどのように伝熱をしていくかで、ハゼるタイミングやポイントが決まってきます。ハゼるポイントが変わればデベロップするタイミングも変わってきます。
つまり、最初の投入温度はすべての工程や中継点やポイントに影響を与えることになります。だんだんと話しが逸れてきたので話しを戻しますと、投入温度決定要素とは「釜の蓄熱を利用したアプローチ」なのか「対流熱を利用したアプローチ」なのかということになります。このことを考慮して投入温度を決定していきます。
~~投入温度を決定する際のパターン~~
1、「伝導熱」を利用したアプローチでジワジワと豆に伝熱を与えていく
2、「対流熱」を利用したアプローチで一気に豆に伝熱を与えていく
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これら2つのアプローチがあります。1での「伝導熱」でのアプローチの場合は、なるべく焙煎機の釜の蓄熱温度を高くしておき、比較的に少ないガス圧で対流熱を抑え気味で焙煎を開始していきます。1での豆への影響は、豆への熱移動をゆっくりとしていきます。コーヒー豆が色づき反応を始まるアプローチが遅くなります。ただ、このときに排気ダンパーを開閉するのかでもコーヒー豆への影響は変わります。比較的に水分量が少ない豆には、排気ダンパーを閉め気味にして少しづつ伝熱と水分抜きのアプローチをしていくことが多くあります。逆に、水分量が多いのであれば排気ダンパーを開き気味にして熱伝導と水抜きをスピーディーに行っていきます。
したがって、この辺りの所作や流れは設定したゴールによって変わる部分と、その焙煎師のセンスが問われていく部分だと感じます。いつも同じ所作や流れのパターンしかない人は、どんなコーヒー豆でも似たような構成のコーヒーが出来上がりがちなのかと思います。
そして、2での「対流熱」の比重を多くを利用した焙煎アプローチの場合は、焙煎機の釜内温度自体は低めであります。最初から、比較的に高いガス圧にして一気にコーヒー豆に風と熱を与え続けて、焙煎を開始していきます。2での豆への影響は、迅速に熱移動と水分抜きが開始して、メイラード反応を早めに促して早い段階で吸熱作用が終了していきます。
この初期段階での【投入量・投入温度】の設定は、初期段階での焙煎アプローチに留まらずに、その後のコーヒー豆の味や香りの反応を決定づける要因にもなります。後々の修正も難しいので、よく考えてから焙煎計画を行うべき最初の工程であります。
◎ターニングポイント・中点◎
このターニングポイントや中点という名称は、コーヒー焙煎師の共通言語であります。いわば、一つの目安や中継点やフラッグであります。この中継ポイントでもある「ターニングポイント(TP)」は、前途での投入量や投入温度などを設定して焙煎開始をしたあとに決定されるものになります。このTPは、コーヒー焙煎工程でも重要な中継ポイントになります。
まず、このTPとは何か?・・という説明をしておきますね。焙煎開始直後は、コーヒー焙煎機の釜内温度自体が蓄熱しており、その焙煎機の釜内温度をコーヒー豆が熱吸収を始めております。焙煎を行っている間に、次第に釜内温度とコーヒー豆温度が一致してきて、釜内温度を指す温度計の温度が上昇を始める地点の中継点のことを「ターニングポイント」や「中点」といいます。
このTPを何度で何分を中継ポイントにするかは、このあとの「イエローポイント」や「クラックポイント」や「デベロップタイム」に対する割合などに重要になってきます。私の使用している焙煎機であれば焙煎プロファイルのパターンにもよりますが、ゆっくりと伝熱をしていくアプローチの場合は100℃前後であったり、スピーディーに伝熱をしていくアプローチの場合は120℃前後であったりとします。
この段階でコーヒー豆は、水分を利用して伝熱を行い熱を豆自体に吸収していっております。そして、温度上昇とともに水分も少しづつ蒸発していきます。コーヒー豆の内部の成分は、目視は出来ないですが少しづつ反応を起こし始めております。生っぽい香りから、少しづつ甘さのある香りにも移行していく前兆があります。見た目は、まだまだ青白い印象であります。
◎ドライイングフェーズ◎
まずは、焙煎計画の初動で決定した投入量と投入温度で投入します。そして、前途であるようなターニングポイントがあり、コーヒー豆と釜内温度が一致して豆自体の温度上昇が開始します。
次に、コーヒー豆は色づき始めるポイントに達します。その達するポイントのことを「イエローポイント」といいます。このイエローポイントまでのプロセスに到達するまでのことを「ドライイングフェーズ」と呼んでおります。まずは、下記にドライイングフェーズでの意味や目的を記述してみました。
~~~ドライイングフェーズの意味や目的~~~
1、生豆に焙煎ドラム内のカロリーを吸収させていく
2、生豆の持つ水分によって豆の中心に向けて伝熱させて成分の反応を起こさせていくこと
3、メイラード反応が起こりやすくするために脱水をしていく
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このドライイングフェーズでは、豆に対して与える熱量も必要であるし、豆に含む水分も脱水していくことも必要であります。豆に対して熱量を与えていないと、後々に成分自体に反応が起きにくくなり香りがぼやけた印象になったり味わいが重くなる印象になったりとすることになります。そして、豆に含む水分も脱水を促していなかないと、この次の中継ポイントとしているメイラード反応が遅れることになります。
コーヒー焙煎は、外観と中身は別々に考えつつ反応を見て判断していかなければならないので、このドライイングフェーズでもどのくらい脱水をしているかは見た目だけでなく香りでも判断していかなければならないのであります。
◎イエローポイント◎
コーヒー焙煎の中継地点の要は、このイエローポイントといっても過言ではないと感じております。このイエローポイントの状態を、何分掛けて仕上げていくかは、とても重要なポイントであると思います。
このイエローポイントの意味や目的を下記にまとめてみました。
~~~イエローポイントの意味や目的~~~
1、メイラード反応開始の目視が出来ること
2、色合いだけでなく香りでも中継点としての判断が出来ること
3、この中継ポイントから計画のズレを修正出来ること
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このイエローポイントは、第1章でもお伝えしていると思いますが、私の使用している焙煎機ではだいたい150℃~160℃くらいの温度を指しております。ただ、このイエローポイントは生豆の水分量が少ないオールドクロップなどでは130℃~140℃で訪れたりしますし、同じ豆でも熱量の差でも見た目だけイエローで中身はまだ反応していなかったりします。もちろん、ニュークロップで同じ水分量であっても産地や品種や栽培条件などでの豆密度の差でも伝熱に差が出てきて反応が遅れたり早まったりもします。
◎デベロップメントタイム◎
コーヒーの香りや味わいが進化していく時間帯といわれているのが「デベロップメントタイム」といいます。この「デベロップ」の割り合いや比率がスペシャルティコーヒーのようなフレーバーやアロマを重視する品質のコーヒー豆には最重要になってきます。
この「デベロップメントタイム」までの流れは良いのに、この時間帯を疎かにするとフレーバーやアロマが未発達のまま印象が暗いコーヒーになってしまいます。では、このデベロップメントタイムの目的や意味を下記にまとめてみました。
~~~デベロップメントタイムの意味や目的~~~
1、ストレッカー分解、キャラメゼリゼーション、メイラード反応などの成分の分解・結合・生成が同時進行していくこと
2、香りと味わいのバランスを決定出来ること
3、酸味・甘味・苦味のバランスを調整出来ること
4、引き上げる際のピークを確認するため
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デベロップメントタイムの計測の目安は、1ハゼの現象が開始してからの時間帯になります。この時間帯で育むのは、スペシャルティコーヒーに含まれる成分を発達させることによって産地特有の風味や味わいが明確に立体的に液体に表れてきます。
ただ、このデベロップメントタイムだけではなく、その前駆体成分となるものを各フェーズで適正な熱と時間を与えていかなければ、最終的な成分進化といわれるデベロップメントタイムの意味はありません。
そして、このデベロップメントタイムは最後の引き上げまでを含めておりますので、最後の香りと味わいのポイントが自分の目指す目的と一致したら引き上げ焙煎終了になります。
まとめ
ここまで長々と私の独断と偏見も含めたコーヒー焙煎を化学的な側面からのアプローチ方法についてのブログ記事にお付き合い頂きありがとうございました。
皆様、如何でしたか?
コーヒー焙煎に対してのメカニズムは様々な側面から測ることが出来なければ再現性があり、コーヒー豆の味と香りの探求は成り立たないことは理解出来ましたか?
私は、このコーヒー焙煎が大好きで趣味と仕事のデベロップメントタイムが続いております(笑)ホントに終わりのない探求の旅が続いております。このブログ記事では、まだまだ原理と理論の実践の部分までしかお伝え出来なかったので、まだまだ続編も記していきたいと思います。
コーヒー焙煎師は、寿司職人や和食の職人などと同じく調理人であると感じております。無数に広がる熱反応があり、その反応もプロセスや意図が変われば味と香りの構成やバランスが変化します。それも、コーヒー豆の産地や品種やプロセスなどでも大きく方向性も変わってきます。
コーヒー情報も日々に科学的な部分やアプローチ方法も解明されて、更に進化を続けております。そして、そんなコーヒー学問でもまだまだ解明されていない謎は沢山あります。それも含めて終わらないコーヒーの謎解きのプロセスも楽しいですね。
今後も、コーヒー学問の最新情報やコーヒー好きの皆様にとって有益な情報をドシドシとこのブログにて更新していきますので、要チェックお願いしますね。あとコーヒー焙煎研究所わたるの店頭でも、常にこのようなコーヒー最新情報をお伝えしてコーヒー教室やトレーニングなども行っております。下記リンクバナーに当店の詳しいアクセス地図や情報なども記載しておりますので、こちらもご参考に下さいね。
最後に、長い文章にお付き合い頂きありがとうございました!!